夕方の駅前で、空を埋めるような鳥の大群を見かけることがあります。
電線にびっしり並んでいたり、一本の大きな木からものすごい鳴き声が聞こえてきたり。「あの鳥は何なんだろう?」と思ったことがある人もいるでしょう。
街中でこうした大群を作る代表的な鳥が、ムクドリです。
昼間はそれほど目立たなくても、夕方になると夜を過ごす場所へ集まってくるため、突然ものすごい数になったように見えることがあります。
夕方に街にいる鳥の大群は何?

駅前や街路樹、電線などに夕方になると大量の鳥が集まっている場合、ムクドリの群れかもしれません。
ムクドリは山奥にしかいない鳥ではなく、住宅地や公園、農地などでも普通に見られる身近な野鳥です。
大群の正体はムクドリであることが多い
ムクドリは全長24cmほどで、スズメより大きく、ハトより小さいくらいの鳥です。
全体的には灰色や茶色、黒っぽく見え、顔のあたりに白い模様があります。くちばしや脚はオレンジ色です。
一羽だけ地面を歩いていると、それほど目立つ鳥ではありません。
ところが群れになると印象が変わります。
夕方の街路樹に次々と飛び込んできたり、「ギャーギャー」「ギュルギュル」といった声が一斉に聞こえたりするため、かなりの存在感があります。ムクドリの全長や外見、夕方に大群でねぐらへ戻る習性は自治体の資料でも確認できます。
電線や駅前の木に大量にいる鳥もムクドリ?
ムクドリの大群は、街路樹だけでなく電線や建物の周辺で見られることもあります。
特に夕暮れどきに、
- それまで少なかった鳥が急に増える
- 大群になって上空を飛び回る
- 電線にずらっと並ぶ
- 最後は同じ街路樹や公園の木へ入っていく
といった動きをしているなら、ねぐらへ集まるムクドリの可能性があります。
もちろん、街で群れている鳥がすべてムクドリとは限りません。
「鳥がたくさんいるからムクドリ」と決めつけず、大きさや模様、鳴き声も合わせて見てみると分かりやすいです。
ムクドリの大群はなぜできる?
一羽ずつならどこにでもいそうなムクドリが、なぜ夕方になるとあれほど大きな群れになるのでしょうか。
ポイントになるのが「ねぐら」です。
繁殖期が終わるころから群れが目立つ
ムクドリは繁殖期には、つがいで子育てをします。
その時期が終わるころから群れで行動する姿が目立つようになり、多数のムクドリが同じ場所で夜を過ごすようになります。
千葉市では繁殖期を3月下旬~7月の目安としており、市川市でも7~10月ごろから夕方に群れで集まり始めるとしています。ただし、時期は地域やその年の状況によってずれるため、全国どこでも同じ月に大群になるわけではありません。
夜は「集団ねぐら」に集まる
鳥が夜に休む場所を「ねぐら」と呼びます。
ムクドリは繁殖期以外になると、多数の個体が同じ場所で休む「集団ねぐら」を作ります。
日中は餌を探して周辺へ散らばっていますが、夕方になるとねぐらへ戻ってきます。
そのため、昼間には数羽しか見なかった場所でも、夕方になると何百、何千という規模の群れになることがあります。
千葉市では、場所によっては数百から数万羽単位の大規模なねぐらが形成されるとしています。
なぜ大群になるのかは完全には分かっていない
「大勢でいれば天敵に襲われにくいから」
ムクドリの大群について調べると、こうした説明を見かけることがあります。
実際、夜行性の猛禽類から身を守るためなど、集団ねぐらにはいくつかの説があります。
ただ、ここは断定できません。
千葉市も、ムクドリが集団ねぐらを作る理由には諸説があり、明確な目的や条件はまだ解明されていないとしています。
つまり、ムクドリが大群になる理由は一つに決まっているわけではないということです。
ムクドリはなぜ夕方になると集まる?

昼間にはあまり見かけなかったのに、夕方になると急にムクドリだらけになる。
不思議に見えますが、一日の動きを知ると分かりやすくなります。
昼間は餌を探して周辺に散らばっている
ムクドリは雑食性で、昆虫や木の実、果実などを食べます。
日中はねぐらにずっといるわけではなく、餌を探しながら周辺へ散らばって活動しています。
そのため、昼間は巨大な群れが目につかないことも珍しくありません。
夕方になるとねぐらへ戻ってくる
日が傾くと、それぞれの場所で活動していたムクドリがねぐらへ戻り始めます。
最初は小さな群れだったものが次第に合流し、ねぐらの周辺ではかなりの数になることがあります。
だから、夕方の駅前で突然、
「さっきまでいなかったのに、鳥だらけになっている」
という光景が生まれます。
夕方になると駅前の繁華街や街路樹、公園などへ集まる行動は、自治体でも確認されています。
ねぐらに入る前に飛び回ることもある
ムクドリは、ねぐらの近くへ来たら一羽ずつ静かに木へ入っていくとは限りません。
周辺の電線や木に一度とまったり、大きな群れで上空を飛び回ったりしてから、ねぐらへ入っていく姿を見ることがあります。
夕暮れの空で鳥の大群が何度も向きを変えながら飛び、しばらくすると近くの木へ入っていったなら、夜を過ごす場所へ集まっているところかもしれません。
なぜムクドリは駅前や街路樹に集まる?

ムクドリの大群で不思議なのが、自然豊かな山ではなく、駅前や繁華街で見かけることが多い点です。
実際、各地の自治体が駅前のムクドリ対策を行っています。
駅前の大きな木がねぐらになることがある
ムクドリは、都市部の街路樹や公園の木などを集団ねぐらに利用することがあります。
一本の大きな木に集中することもあれば、何本もの街路樹に分かれて入ることもあります。
駅前は人や車が多く、決して静かな場所ではありません。それでも大群がねぐらを作るケースがあります。
「街が暖かいから」だけでは説明できない
街灯があるから、暖かいから、天敵が少ないから。
都市部にムクドリが集まる理由として、さまざまな説明があります。
ただ、「これが原因」と一つに決めるのは避けたほうがいいでしょう。
実際に明るくにぎやかな都市部に大きなねぐらができることは確認されていますが、そもそもムクドリがどのような条件で集団ねぐらを選ぶのか、分かっていない部分も残っています。
ムクドリの大群が見られる時期はいつ?

ムクドリの大群は、一年中同じように見られるわけではありません。
繁殖期が終わるころから群れが目立つようになります。
夏から秋は大群を見かけやすい
我孫子市では、ムクドリが駅周辺に数多くとまる時期を6月下旬から12月上旬として対策を実施しています。
市川市では7~10月ごろから群れが増え、11~2月ごろには市街地に大群でねぐらを作るという年間の目安を示しています。
この違いからも分かるように、「ムクドリの大群は○月から○月まで」と全国一律には決められません。
冬にも大群が見られることがある
夏や秋のイメージが強いかもしれませんが、冬まで大きな群れが見られる地域もあります。
逆に繁殖期に入ると群れが解散し、市街地で目立たなくなる地域もあります。
そのため、
夏以降に群れが大きくなりやすいものの、いつまで見られるかは地域によって違う
くらいに考えておくのがよさそうです。
ムクドリの大群はフンと騒音が問題になる
ムクドリが群れること自体は自然な行動です。
ただ、それが駅前や住宅地のすぐそばとなると、人との間に問題が起きます。
代表的なのがフンと鳴き声です。自治体でも、騒音やフンによる汚れ、悪臭が生活被害として挙げられています。
一本の木でもフンの量はかなり多かった
私自身、大都会の駅前で、一本の大きな木に鳥の大群が集まっているのを見たことがあります。
上を見ると、とにかく鳥の数がすごい。
ただ、それ以上に印象に残ったのが木の下でした。
地面には大量のフンが落ちていて、「これだけの鳥が毎日集まったら大変だな」と感じるほどでした。
一羽や数羽なら気にならなくても、同じ場所に何百羽もの鳥が集まれば話は変わります。
歩道が汚れたり、木の下に止めた車にフンが落ちたりすることもあります。毎日のように同じ場所がねぐらになれば、臭いも無視できません。
鳴き声も数が増えるとかなり大きくなる
ムクドリは群れの中でよく鳴きます。
一羽なら気にならない声でも、一本の木に大量のムクドリが集まれば相当なにぎやかさになります。
特に住宅地の近くにねぐらができれば、夕方から夜にかけての騒音が問題になることがあります。
ムクドリが悪さをしようとしているわけではありません。
鳥のねぐらと、人が暮らしている場所が重なってしまうことが問題なんです。
ムクドリのフン・騒音対策は?

ムクドリの対策は、思っている以上に難しいものです。
「この音を流せば来なくなる」「木を切れば終わり」というほど単純ではありません。
実際、自治体でもさまざまな方法が試されていますが、全国的に抜本的な解決策は見つかっていないとされています。
自宅に来るなら、まず入りにくい状態を作る
ベランダなど限られた場所への侵入を防ぎたいなら、防鳥ネットなどを使って物理的に入れないようにする方法があります。
ただし、ネットを設置するなら、鳥が絡んだり隙間へ入り込んだりしないよう、きちんと固定することが大切です。
すでに巣がある場合は、いきなり撤去せず、中に卵やヒナがいないか確認してください。
庭木がねぐらになっている場合
ねぐらになっている木の枝を剪定したり、ネットで木を覆ったりする方法も実際に行われています。
ただし、これも万能ではありません。
千葉市では、剪定やネットによって追い払っても、近くの木や人工物へ群れが移ってしまう場合があるとしています。
「この木からいなくなった=問題が解決した」とは限らないわけです。
音による追い払いは慣れることがある
ムクドリが嫌がる音を使ってねぐらから追い払う方法もあります。
しかし、同じ音を長く使っていると、ムクドリが慣れて効果が薄れることがあります。
そのため、鳥よけの音や置物を一つ設置すれば永久に来なくなる、とは考えないほうがいいでしょう。
駅前や電線なら自分で何とかしようとしない
駅前の街路樹、公園、道路沿いの木などは公共のものです。
大量のフンや騒音で困っている場合は、その場所を管理している自治体や施設管理者へ相談しましょう。千葉市も、公共施設や街路樹にねぐらがある場合は各施設管理者へ問い合わせるよう案内しています。
電柱や電線も、自分で道具を使って追い払おうとするのは危険です。
大規模なねぐらほど、個人で無理に解決しようとしないほうが安全です。
ムクドリを勝手に捕まえたり巣を撤去したりしていい?
フンや騒音に困っていても、ムクドリを自由に捕まえたり傷つけたりできるわけではありません。
鳥獣保護管理法では、鳥獣の捕獲・殺傷や鳥類の卵の採取は原則として禁止されています。被害防止など一定の目的で行う場合には、許可が必要になることがあります。
一方で、ここは勘違いしやすいところですが、巣があるだけで必ず撤去できないわけではありません。
巣の中に卵やヒナがいなければ、巣そのものを撤去することはできます。
卵やヒナがいる場合は勝手に撤去せず、自治体などへ相談してください。
高い場所の巣を無理に取るのも危険なので、自分で対応するのが難しければ専門業者へ相談したほうがいいでしょう。
ムクドリは本当に害鳥なの?
駅前で大量のフンを見たり、ものすごい鳴き声を聞いたりすると、「迷惑な鳥だな」と感じるかもしれません。
ただ、ムクドリそのものが悪い鳥というわけではありません。
ムクドリは昆虫や木の実、果実などを食べます。農林業上の害虫を食べることもあり、昔から益鳥として見られてきた面もあります。
問題になるのは、大きな集団ねぐらが人の生活圏と重なったときです。
ムクドリにとっては夜を過ごしているだけでも、その下が駅前の歩道や住宅地なら、フンや鳴き声は大きな問題になります。
野鳥として見ると面白い行動ですが、人との距離が近すぎると困った存在にもなる。
街中のムクドリ問題は、そんな難しさを持っています。
まとめ
夕方、駅前や街路樹、電線などに現れる鳥の大群は、ムクドリであることがあります。
ムクドリは日中に周辺で餌を探し、夕方になると夜を過ごす集団ねぐらへ戻ってきます。そのため、昼間は静かだった場所に突然大量の鳥が現れたように見えることがあります。
なぜ大群でねぐらを作るのかについては、天敵から身を守るためなどいくつかの説がありますが、まだ完全には分かっていません。
そして、駅前や住宅地に大きなねぐらができれば、フンや鳴き声が問題になります。
私が駅前で見た大群も、鳥の数以上に木の下のフンの多さが印象に残りました。
身近な野鳥ではありますが、大群となると人への影響も大きくなります。自宅でできる範囲を超えている場合や、公共の街路樹・電線などに集まっている場合は、無理に追い払わず管理者へ相談するのがよいでしょう。

