秋が深まると、ツキノワグマの目撃情報は少しずつ減っていきます。
「そろそろ冬眠したのかな」と思う一方で、冬になってもクマが目撃されることがあります。
ツキノワグマが冬眠に入るのは、一般的に11月下旬から12月ごろです。ただし、すべての個体が同じ時期に穴へ入るわけではありません。
この記事では、ツキノワグマが冬眠する時期と、冬眠前の秋に見られる行動について解説します。
ツキノワグマはいつ冬眠する?

冬眠に入るのは11月下旬から12月ごろ
ツキノワグマは、一般的に11月下旬から12月ごろに冬眠へ入ります。
環境省の資料でも、クマ類は11月下旬から12月ごろに冬眠期へ入り、3月から5月ごろまで冬眠するとされています。冬眠穴には、岩の隙間や樹洞、木の根元にできた空間などが使われます。
ただし、これはあくまで目安です。
11月中に姿を見せなくなる個体もいれば、12月になっても活動を続ける個体もいます。
「12月になれば、山にクマはいない」とは言い切れません。
冬眠から目覚めるのは3月から5月ごろ
ツキノワグマが冬眠から目覚めるのは、一般的に3月から5月ごろです。
冬眠明けの時期にも幅があり、地域やその年の気候、個体によって前後します。
また、冬眠穴の中で子どもを産んだメスは、ほかの個体よりも穴から出る時期が遅くなる傾向があります。
私の職場でも11月後半に目撃がなくなった
私が以前働いていた職場は、冬になると雪が降る地域にありました。
春から秋にかけては、周辺でクマの目撃情報が出ていました。それが11月後半になると、ピタッと聞かれなくなったのです。
もちろん、目撃されなくなっただけで、周辺のクマがすべて冬眠したとは断定できません。
それでも、雪が降り始める時期と目撃が途絶える時期が重なっていたのは、今でも印象に残っています。
冬眠する時期は地域や年によって変わる

毎年同じ時期に冬眠するとは限らない
ツキノワグマの冬眠は、決まった日から一斉に始まるものではありません。
冬眠に入る時期は、地域やその年の気候、餌の状態などによって変わります。
同じ地域でも、前年とまったく同じ時期に目撃が途絶えるとは限りません。
そのため、月だけを見て「もう冬眠している」と判断するのは難しいでしょう。
秋の餌の量も関係する
秋になっても山に食べ物が残っていれば、遅い時期まで採食を続ける個体がいます。
一方、餌が少ない年に早めに冬眠へ入った事例も確認されています。
ただし、餌が少なければ、すべてのクマがすぐに冬眠するわけではありません。別の餌を探して移動し、人里の近くまで現れる個体もいます。
冬眠入りの時期は、餌の量だけで決まるものではなく、地域や個体によって違います。
冬眠前のツキノワグマはどう行動する?
木の実や果実をたくさん食べる
冬眠前の秋は、ツキノワグマにとって重要な時期です。
冬眠中は食べ物を取らず、秋までに蓄えた脂肪を使って過ごします。そのため、秋になると栄養価の高い木の実や果実を多く食べます。
主な食べ物は、次のようなものです。
- ブナの実
- ミズナラなどのドングリ
- クリ
- ヤマブドウ
- サルナシ
ツキノワグマは植物質を中心とした雑食性で、食べ物の種類は季節や地域によって変わります。秋には、ブナやミズナラなどの堅果類が特に重要な餌になります。
餌を探して活発に動く
冬眠が近づくと、クマの動きが鈍くなるように思うかもしれません。
しかし、秋はむしろ餌を求めて活発に動く時期です。
環境省は10月から11月を「飽食期」とし、冬眠に備えて食欲が増え、活動時間や夜間の活動量も増えると説明しています。
秋遅くまでクマの目撃が続くのは、冬眠前の採食行動も関係しています。
木の実が少ない年は人里へ近づくこともある
ブナやミズナラなどの木の実が少ない年には、クマが餌を探す範囲を広げることがあります。
山の中で十分な餌を見つけられないと、集落周辺のカキやクリ、農作物などを求めて人の生活圏へ現れることもあります。
栃木県のツキノワグマ管理計画でも、秋は冬眠に向けて栄養を蓄える時期であり、主要な餌となる堅果類が不作の年には、人の生活圏への出没が増えることが指摘されています。
クマを引き寄せる可能性があるものには、次のようなものがあります。
- 収穫せずに残したカキやクリ
- 畑に残された農作物
- 生ゴミ
- 家畜の飼料
- 屋外に置いた食品
木の実が少ないからといって、すべてのクマが人里へ来るわけではありません。
それでも秋は、庭や畑に餌となるものを残さないことが大切です。
ツキノワグマはどこで冬眠する?

樹洞や岩穴などを利用する
ツキノワグマは、雨や雪を避けられる穴や空間を冬眠場所として利用します。
主な冬眠場所は次のとおりです。
- 大きな木の樹洞
- 岩の隙間や岩穴
- 木の根元にできた空間
- 斜面に掘った土穴
環境省の資料では、岩の隙間や樹洞、根上がりなどを利用するほか、自分で土に穴を掘ることもあるとされています。
人が見ると小さく感じる穴でも、奥に空間が広がっていることがあります。
冬の山で穴を見つけても、のぞき込んだり近づいたりしない方がよいでしょう。
冬眠しない「穴持たず」のクマもいる?
穴持たずとは冬でも活動するクマの呼び方
冬眠する時期になっても穴へ入らず、活動を続けるクマを「穴持たず」と呼ぶことがあります。
これは学術用語や正式な分類名ではなく、猟師などの間で使われてきた呼び方です。自治体の注意喚起でも、なかなか冬眠に入らないクマを説明する言葉として使われています。
最近は冬のクマが注目されることも増え、「穴持たず」という言葉を見かけるようになりました。
ただし、穴持たずが全国的に増えているとまでは言い切れません。
冬に目撃されたクマがすべて穴持たずとは限らない
冬にクマが目撃されたからといって、その個体が冬の間ずっと活動しているとは限りません。
冬眠に入る時期が遅れているだけかもしれませんし、何らかの理由で一時的に穴の外へ出ている可能性もあります。
また、人里にカキや飼料などの餌が残っていれば、それを利用して活動を続ける個体が出ることも考えられます。
冬に目撃されたクマをすべて「穴持たず」と決めつけず、冬でも活動する個体がいる可能性がある、と捉えるのがよいでしょう。
冬だからクマがいないとは限らない
冬になると、多くのツキノワグマが冬眠へ入ります。
春から秋に比べれば目撃は減りますが、すべての個体が同じ時期に姿を消すわけではありません。
雪の上にクマらしい足跡があった場合は、近くで活動している可能性があります。
山や林へ入るときは、季節にかかわらず地域の出没情報を確認しましょう。
また、クマが生息する地域では、鈴や笛などで人の存在を知らせる方法が自治体からも案内されています。ただし、音を出せば必ず遭遇を防げるわけではありません。周囲の音が大きい沢沿いや悪天候時には、クマが人の存在に気づきにくい場合もあります。
冬の山でもクマ対策を忘れずに
冬の山や林でも、クマが絶対にいないとは限りません。
クマの生息地へ入るときは、クマ鈴やクマスプレーを用意しておくとよいでしょう。
まとめ
ツキノワグマは、一般的に11月下旬から12月ごろに冬眠へ入ります。
冬眠から目覚めるのは3月から5月ごろですが、冬眠入りも冬眠明けも、地域や年、個体によって前後します。
冬眠前の秋は、木の実や果実を食べて脂肪を蓄える時期です。餌を求めて活発に動き、木の実が少ない年には人里の近くへ現れることもあります。
また、冬でも活動する「穴持たず」と呼ばれるクマが確認されることがあります。
冬になれば必ずクマがいなくなるわけではありません。山へ入る前には、その地域の出没情報を確認しておきましょう。

